このブログのタイトルでもあるように、私は肺腺がんでROS1融合遺伝子が陽性のタイプなのです。それで、現在は唯一のROS1適応の分子標的薬であるファイザーのザーコリ(一般名:クリゾチニブ)を服用しています。
そしてもちろん、ザーコリに続くROS1阻害剤の動向も気になるところです。
さて、エヌトレクチニブ、ですが、ROS1適用としては、多分、ロルラチニブの次、くらいに市場に出てくるのでは?と思われるお薬です。
(ただし、ロルラチニブは治験ではROS1への有効性が確認されているものの、今のところはALK阻害剤としてしか製造販売承認の申請は出されていません)
また、2018年7月現在、エヌトレクチニブは日本でも治験が行われています。
概要
エヌトレクチニブは、アメリカの「イグナイタ」という会社が開発しているROS1/TRK阻害剤で、このイグナイタ社は2017年末にロシュ社に買収されています。
ある記事では、売上”0”の会社を買収、という表現がされており、このことがエヌトレクチニブの少なくともビジネス上での将来性が有望であることを表していると言ってもよさそうです。
日本ではロシュの傘下である中外製薬が取り扱うことになります。
中外製薬のWEBページからの引用です。
Entrectinibは、ROS1(c-ros遺伝子1)およびTRK(神経栄養因子受容体)ファミリーを強力かつ選択的に阻害する経口投与可能なチロシンキナーゼ阻害剤であり、脳転移巣への作用も期待されています。Entrectinibは、ROS1融合遺伝子陽性の非小細胞肺がん、およびNTRK融合遺伝子陽性の固形がんを対象に開発が進められています。現在、ロシュ社により第II相臨床試験(STARTRK-2)が実施されています。Entrectinibは、がん種を問わず、NTRK融合遺伝子陽性の固形がんに対し、2017年5月に米国食品医薬品局(FDA)より画期的治療薬(Breakthrough Therapy)に、同年10月に欧州医薬品庁(EMA)よりPRIME(PRIority MEdicines)に指定されています。国内でも、2018年3月に先駆け審査指定制度の対象品目として指定を受けています。
”NTRK融合遺伝子”については自分的にはほぼ初耳でした。中外製薬のWEBページに簡単な解説がありましたのでリンクしておきます。
治験と効果
2017年末頃に発表された治験の成績はがん情報サイト「オンコロ」からの引用になりますが、
本試験の結果、主要評価項目である客観的奏効率(ORR)は治験医師判定によれば78%(N=25/32人)、独立中央評価委員会(ICR)によれば69%(N=22/32人)であることが示された。また、脳転移を有する患者(N=6人)における頭蓋内病変の客観的奏効率(iORR)は83%(N=5/6人)であることが示された。
副次評価項目である奏効持続期間(DOR)中央値は28.6ヶ月、無病悪生存期間(PFS)中央値は29.6ヶ月であった。
一方の安全性はグレード1または2の有害事象(AE)を主に発症し、エヌトレクチニブの有害事象(AE)により治療継続が困難となった患者は3%であった。
とのことで、奏功持続期間も無増悪生存期間も結構長めな感じがしますね?
ただ、遺伝子タイプ別の成績がはっきりわからないのは残念かな、それから、前治療歴の有無、これについても特に記されていません。これって個人的には結構重要だったりするのですよ。有り体に言えばザーコリ効かなくなったときに使えるかな?って見方なので。
で、オンコロに元文献のリンクあったので調べてみたのですが・・
どうやらこの治験では前治療歴のある人は参加除外されているみたいですね。。
Exclusion Criteria:
- Current participation in another therapeutic clinical trial
- Prior treatment with approved or investigational Trk, ROS1, or ALK inhibitors in patients who have tumors that harbor those respective gene rearrangements- Note: prior treatment with crizotinib is permitted only in ALK- or ROS1-rearranged NSCLC patients presenting with CNS-only progression. Other ALK inhibitors are prohibited.
Google Chromeで翻訳
除外基準:
- 別の治療的臨床試験への現在の参加
- これらのそれぞれの遺伝子再配列を有する腫瘍を有する患者における、承認されたTrk、ROS1、またはALK阻害剤による前治療- 注:クリゾチニブの事前治療は、CNSのみの進行を呈するALKまたはROS1再構成NSCLC患者でのみ認められる。他のALK阻害剤は禁止されています。
ちょっとややこしいですが、(自分だけかもしれませんが、何度も読み返して、ようやく理解できました^^;)
まず、「これらのそれぞれの遺伝子再配列を有する腫瘍を有する患者における、承認されたTrk、ROS1、またはALK阻害剤による前治療」のある人は治験に参加できません。
少し補足すると、「これらそれぞれの遺伝子再配列を有する→要はROS1を持ってる人、TRKを持ってる人、またはALKを持ってる人でそれぞれの遺伝子融合の治療に承認されている薬によって治療した履歴のある人」ってこと。
要は、それぞれの遺伝子タイプに対してそれぞれの適応薬で治療をしたことがあるひと、ってことですから、
さらに要すれば、「分子標的薬で治療したことがある人は除外する」ってことですね。
ただし、「注:クリゾチニブの事前治療は、CNSのみの進行を呈するALKまたはROS1再構成NSCLC患者でのみ認められる。」これはどういうことかというと、
前治療歴があっても、クリゾチニブに限り、さらに中枢神経だけにがんの進行がある人のみは参加することができると。そんな人いるのかな・・原発が肺がんで転移は中枢神経だけってことなのか?ちょっとここはこの文章だけでははっきりわからないですが。。
(上に書いたことはあくまで私的な解釈なので、ご注意くださいね)
そして、自分は現在クリゾチニブを服用していますが、CNS(中枢神経)への転移はありません。
なので、私がもし治験に参加したいと思ってもできないですねえ、「CNSのみの進行を呈する」という条件は多分、クリゾチニブ治療歴のある原発巣への効果は期待していないが(あるいはすでに効果があるというデータを持っているため治験は不要?)、脳転移巣への効果は確認したいってことなのでしょう。
とにかく、もう少しでも詳しいデータがあればなあって思います。
オンコロのURL、貼っておきます。
そして、治験参加募集の情報はこちら。
追加情報
2018年9月26日、中外製薬は開発中のエヌトレクチニブがROS1患者に対して奏功期間が2年以上であることを発表しました。
お前たちちっともクリックしねえなあ、オラ、がっかりすっぞ!!
(野沢雅子、もとい、悟空の声で読んで下さい)
コメント一覧